
「水は?食料は?だいじょうぶ? 」

こうやってオーストラリアのど真ん中、赤土の一本道を一人で自転車こいでいたら、車のドライバーが声をかけてくれる。
こんなにも“人のあたたかさ”が身に染みた旅は、あとにも先にもなかったかもしれない。
この旅における食料・水補給の前提
オーストラリア中央部、アリススプリングスを出発してキングスキャニオン、ウルルを巡り、再びアリススプリングスへと戻る周遊ルート。約1400kmを3週間かけて走ったこの旅のなかで、もっとも神経を使ったのが“食料と水の補給”だった。
旅の補給事情をまとめると、こうなる:
- スーパーがあるのは、出発地アリススプリングスと、ウルルの2か所のみ。
- 最大の無補給区間は5泊6日。
- キャンプ場やロードハウスでは軽食・スナックはあるが、頼り切れない。
- 貯水タンクは枯れているかもしれない
つまり、「どこかで何か買えばいいや」では通用しない。すべてを想定し、食料と水を「全て背負って走る旅」なのだ。
区間別:食料の準備と補給計画
アリススプリングス → キングスキャニオン(5泊6日)
この旅で最長の無補給区間がこの6日間。
スーパーがあるのはアリススプリングスのみなので、ここで6日間分の食料をすべて揃える必要があった。
購入した食料一覧:
- オレンジ3個、リンゴ2個、トマト2個、バナナ3本
- サラダレタス1袋、グリーンレタス小2株、玉ねぎ5個、にんにく
- マヨネーズ1本、醤油1本
- 紅茶
- 牛乳2L
- ビーフジャーキー2袋、カルパス3本、スパム缶1個、ツナ缶6個
- ミーゴレン(インスタント麺)5食、即席パスタ/ライス5食
- 食パン1袋
- スナック菓子2袋、オレオ2袋、ドライベリー1袋
- パイナップル缶1個、Weet-Bix(オーストラリアのシリアル)1袋
- お米、尾西食品のアルファ米(日本から持参)

実際多かったがウルルのスーパーは若干割高ではあるので、ここで多めに買っておいて正解だった。
食品選びのポイントは「常温保存ができるかどうか」。
生鮮の果物や野菜は早めに食べきる。ビタミン・ミネラル補給を意識しつつ、主なたんぱく源はツナ缶・カルパス・ジャーキーなど。牛乳は常温保存できる牛乳を購入した。炭水化物はお米とパンを中心とした。

特に印象に残ったのがパイナップル缶。乾いた身体に染みる甘酸っぱさ。
シロップまでしっかり活用、水筒に入れた「パイナップルウォーター」は最高だった。
キングスキャニオン → ウルル(3泊4日)
キングスキャニオン付近には飲用水と軽食を買えるキャンプ場が2つある:
- Kings Canyon Resort:食品・カー用品・調味料も揃う。レストラン・シャワー・売店あり。
- Kings Creek Station:軽食・ドリンク・お土産のみ。品揃えは限られる。
キングスキャニオン登山口で5.5Lの水を補給し、食料は購入することなく持参分でまかなった。

ウルル → アリススプリングス(4泊5日)
ウルルでは大型リゾート施設内にあるスーパーが頼れる存在。
割高ではあるが何でも揃うため、残りの行程に向けて必要なものを購入:
- ツナ缶、エナジーバー、洋ナシ2個、牛乳1L、食パン1袋、にんにく
この区間ではロードハウスやキャンプ場も数か所あり、軽食程度は手に入る。しかし、走行中に頼れるレベルではないため、出発前に十分な補給をしておくのが正解だった。
通りすぎる車からもクッキーやエナジーバーなどを分けてもらうことも。
「水は?食料は?」と気遣ってくれるドライバーの存在がありがたかった。
水の準備と補給計画
オーストラリア中央部のアウトバックは水が命。
脱水は命取り。「水は多すぎるくらいでちょうどいい」という覚悟で準備を進めた。
貯水タンクの水は飲める?衛生状態は?
- 基本的にはそのまま飲める。実際、筆者も煮沸・フィルターを使わずにそのまま飲んだことが何度もある。
- 出したての水は冷たくておいしい。
- ただし、気になる人はフィルターを通すのが安心。筆者も一応フィルターは持参し、何度か使用。
- キングスキャニオン、ウルル、カタジュタには「飲める水道」がある(※キングスキャニオンは特においしい。ほかは不味い)。
⚠️ キャンプサイトの貯水タンク、1か所は水が枯れていた。
WikiCampsで確認できる情報は参考程度に。「信じすぎず、水は多めに持つ」のが鉄則。
実際に持ち運んだ水の量と容器
最大持ち運び量:18L
内訳:
- リーコン1L(ハイドラパック)×1
┗ 走行中に使うため自転車のドリンクホルダーに常時設置 - プラティパス2L(プラティパス)×1(※途中で破損)
- シーカー3L(ハイドラパック)×2
- ペットボトル・空容器などを再利用
区間別:水の備えと実情
① アリススプリングス → キングスキャニオン(5泊6日)
- 一日あたり:3L(水2L+調理・手洗い用1L)×6日分 → 計18L
- 実際はキャンプサイトに貯水タンクあり/通りがかりの車から水をもらえる場面も。
- 初日は節水しすぎて軽い脱水症状が出た。油断禁物。

積載水の内訳例:
- 水16L + 牛乳2L(栄養も補える)
「水が重すぎる」と感じたとしても、その重さが命を守る。
軽量化より、“命ファースト”な装備計画が大切。
② キングスキャニオン → ウルル(3泊4日)
- キングスキャニオンで水5.5Lを汲む+残っていた水で合計12L準備。
- ウルルまでは4日なので3L/日でちょうど良い計算。
- 万が一の枯渇に備え、他力本願に頼らず自力で完走する構えで。
ウルルに到着後、水を捨てたりシャワーに使ったりできる余裕があるくらいでちょうどいい。
③ ウルル → アリススプリングス(4泊5日)
- 想定必要量:3L × 5日間 → 15L
- 内訳:水12L+フルーツジュース2L+牛乳1L
- この区間はロードハウスやキャンプ場があり、貯水タンクも設置されている。最悪、助けを求めることもできるが…
→それでも「水は満載で」が鉄則。
「あまくて酸っぱい味のある飲み物があると本当にうれしい」
フルーツジュースやフレーバー飲料は、気持ちの回復にも大きく効く。
実際の食事スタイルとメニュー
朝ごはん
朝はサクッと食べられるように食パンにマヨネーズと野菜をのせてサンドイッチとして食べることが多かった。時間のあるときはミーゴレン(インスタント焼きそば)を食べた。炭水化物をしっかり1日のエネルギーを補給した。

昼ごはん(行動食)
エナジーバーやスナック菓子、果物がメインの昼食となることが多かった。レストエリアで休憩しながら食パンをかじることもあった。ドライフルーツを意識的にたべてビタミン・ミネラルの補給に努めた

夜ご飯
一番豪華な食事となる。お米を炊いたり、トマト、玉ねぎを炒めたりした。

補給で感じた「旅のリアル」エピソード
補給は「予定通りいけば安心」なものだが、アウトバックでは予期せぬトラブルや思いがけない出会いがある。それらすべてが、旅の彩りになる。
車からの“差し入れ”が心に沁みた
未舗装のメリーニーループを1人で走っていると、通りすがる車がほぼ必ずと言っていいほど声をかけてくれる。
「水は足りてる?」「食べ物ある?」
彼らは本当に親切だった。中にはクッキーやエナジーバー、ドライブルーベリーをくれる人も。
オーストラリアという国が探検・冒険によって開拓された歴史を持つからか、冒険者に対するリスペクトやサポート精神が自然と根づいているのかもしれない。
WikiCampsの情報は“基本信用、でも過信はNG”
補給ポイントの確認に使っていたのは有名アプリ【WikiCamps】。
掲載されている水場はすべて存在し、表示されている場所で実際に水は手に入った。
…が、1か所だけ、水が枯れていた貯水タンクがあった。
「水があると書いてあったから持たずに来たら、なかった!」
→ これは命取りになりかねない。
結論としては、
WikiCampsを信用しすぎず、水は常に余分に持っておくべき!
「余ったわ!重たかったぜ!と笑って帰る」ぐらいでちょうどいい。命あっての旅だ。
「ありがとう」の気持ちは忘れずに
水や食料をくれた人にはお礼をしっかり伝えよう。
自分もいつか、誰かに優しくできる人でありたい。
まとめ:補給は「命」と「旅の質」を左右する
オーストラリア中央部、アウトバックを自転車で旅するなら――
食料と水の補給戦略は“すべての土台”になる。
- スーパーがあるのはアリススプリングスとウルルのみ。
→ それ以外の補給は「できたらラッキー」くらいに考える。 - 食料は常温保存ができるもの、高栄養なものを選びたい。
- 水は一日3L × 必要日数+αで計画を。余るぐらいでちょうどいい。
そのうえで――
- 実際にはすれ違う車の差し入れに何度も助けられた。
- 貯水タンクの水は飲めるが、1か所だけ枯れていたこともあった。
- 補給の心配がいらない日がくると、旅がぐっと快適になる。
パイナップル缶のシロップがこんなに沁みるなんて思ってなかった。
貯水タンクから汲みたての水が、冷たくて、最高だった。
過酷だけど、人間的な経験。
それがこの旅の補給だった。
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